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2018年9月9〜14日

地域再生視察② 徳島・高知編
【徳島県】

■徳島県の概要
徳島県は関西圏とみなされるほど、四国4県の中で最も関西とのアクセスが良く、淡路島経由の陸路で神戸市と、フェリーで和歌山市と繋がっています。その分、歴史的に関西への人口流出が多いのがネック。県都の徳島市は、海、山、川に囲まれた風光明媚な街ですが、四国の県都の中で人口は最小(25万人)。駅前中心市街地の衰退も最も激しく、街の顔でもあった「そごう」が2020年に閉店することで、さらに危機感が強まっています。

そんな徳島県は、大都市圏からの企業誘致に積極的で、特に内陸部の山里にある神山町は「サテライトオフィスの聖地」。商店街の丸亀町(香川県高松市)と並んで、まちおこしの世界では知らぬものがない存在です。しかし今回は神谷町ではなく、古い町並みが残り観光名所にもなっている、美馬市脇町に行ってきました。脇町は「うだつ」と言う瓦屋根に付ける装飾が多いことで知られています。

■重伝建の町、脇町
ところで、「重要伝統的建造物群保存地区」略して「重伝建」ってご存知ですか?国内でも特に歴史と価値のある町並みが指定される「町並みの重要文化財」のことです。京都市の産寧坂や金沢のひがし茶屋。蔵の街・川越などの有名観光地から、一般的には無名の穴場的なところまで、なんと120ヶ所!歴史的な価値や町並みの連続性が重視されるので、どこも相当の実力派。「木造中心の町並みが、まだこれだけ残ってるのか!」と日本の底力に驚くでしょう。

マニアの横道にそれましたが、要は今回視察した脇町も重伝建なんです。東京の下町などで、古い建物を再利用したコミュニティスペースやシェアオフィスなども増えていますが、脇町のような国宝・重文クラスの歴史町では、あまり例がないと思います。

■サテライトオフィスの特長
その脇町のサテライトオフィスは、まさに町並みの中にある「森邸」(築150年)という古民家を改修したコワーキングスペース。現在、東京の企業が5社入っており、そのうちの2社は常駐勤務です。また、地元ソーメンなどの軽食を出すカフェを併設し、テイクアウトの紅茶や特産品の販売も行なっているので、一般の人も利用可能です。

実際にその空間に入ってみて感じたのは、現代的なオフィスにはない柔らかさと開放感。土間と床スペースが区切られずに繋がり、板張りの床には掘りごたつ式の広いテーブルがあるのですが、そのこたつ、いやテーブルがいいんですね。グループで会議をするも、個人が作業するも、食事をするも、自由に使えるし、上下関係の「かしこまり」がなく、同じ目線の高さで仕事ができそうな気がします。

■脇町のロケーション
また、行ってみてわかりましたが、四国一の大河・吉野川沿いにある美馬市は、交通の要所で、香川の高松空港にも近い四国のハブ的なロケーション。一級の山河、国宝級の歴史町に抱かれ、アクセスしやすく、生活するにも便利という恵まれた環境なのです。もちろん東京などの都会に慣れた身には、不便に感じられるでしょう。でも、それを補う「豊かさ」があることも確かで、「自然と歴史とモダンライフの共存」のモデルケースになると思いました。

■今後の課題
課題としては、サテライトオフィスからの脱却。東京に数多ある都道府県のアンテナショップのように、地方にメインのオフィスがあって、大都市に支部を置くようになれば、より地方の魅力・発信力が発揮されるはずです。先駆者・徳島、応援してます!

【高知県】

■高知への思い
個人的なことで恐縮ですが、私は高知が好きです。故郷の九州に通じる南国的風土と、明るく開放的で、ちょっと野放図な県民性が肌に合うんでしょうね。四国4県の中でも特に独自性が強く異質な存在の高知県。徳島の友人が言うには「高知は四国の異端児で、東京とダイレクトに繋がっている」とのこと。言い替えれば、険しい山で隣県と隔絶された辺境の地なので、海の向こう、空の向こうに活路を開いてきたのです。

でも、かの地に行く前はちょっとビビっていました。当然ながら、高知は高齢化・過疎化の最前線。好きなところが衰退するのを見たくはない…。そんな複雑な思いで訪れた、20年ぶり3度目の高知市。人口は四国では松山、高松に次ぐ33万人で、ここ数年間は微減中。20年前と比べると、人通りや賑かさは減っているようです。しかし、それを補って余りあるぐらい、街としての魅力度が増していました。

■高知市の尽きない魅力
まず、駅からはりまや橋のある中心市街地までは少し離れていますが、南国風情のある駅前大通りが続き、便利で趣のある路面電車もあるので、駅がイントロの役割を果たしています。そしてメインとなる中心部が素晴らしい!はりまや橋から、700mほど西にある高知城までのエリアが一大繁華街になっており、アーケードの帯屋町、飲み屋街、中央公園、水辺の公園、市場通りと盛りだくさん。トドメは名城・高知城と並ぶ観光の目玉「ひろめ市場」。高知の名産品をこれでもかと堪能できる、開放的で豪快な「飲み屋のフードコート」で、ワールドクラスの観光スポットと断言します!

そんなローカルさと同時に、大丸デパートやおしゃれストリートもあって、地元の上品な人たちも違和感なく楽しめるレンジの広さ。つまり観光地としてだけではなく、住む街としても非常に魅力的なのです。加えて郊外には、景勝地・桂浜あり、誰もが知ってるよさこい祭りあり。まさに全国からの観光客を惹きつける、オンリーワンな都市となっています。
おそらく観光資源に恵まれている上に、それにあぐらをかかない、しっかりした観光と街づくりのビジョンがあるからでしょうね。おそるべし高知!

■郊外の現状と分析
さて、では高齢化と過疎の進む郊外はどうか?意外なことに、こちらも思ったより元気な感じでした。人口は激減しているというのに、なぜ?
日本の地方の多くは、小規模の町村集落があちこちに散らばっているので、どこも共倒れ的に衰退しているのが現状。しかし高知は元々人口が少なく住む所も限られているので、それなりの人口や規模を持つ集落が点在する「少数精鋭型」、あるいは「砂漠のオアシス型」なのです。だから各集落はけっこう底力があるのでは・・・

これからの日本では、全体を発展させることは不可能なので、各地方で中心となる都市やエリアを選び、そこに人口や産業、政治機能などを集めるという「選択と集中」が不可欠となります。その分、集落自体は淘汰されてしまいますが、郊外には手付かずの自然が広がり「モダンな都市とワイルドな大自然の共存」が可能になるかもしれません。
海、山、川と第1級の大自然、豊かな都市、個性的な歴史と文化を持つ高知こそ、最良のモデルになりうるのでは?

■今後の課題
ただし、これ以上の人口流出や高齢化が進めば、集落の維持も難しくなり、自然に呑まれてしまう恐れもあります。東西に長い県土の両端に、求心力のある都市や自治体を確立する必要があるでしょうね。
かように高知も今、香川や徳島と同様、日本の未来の占うケーススタディとしての重責を担わされているのです。

徳島市俯瞰

徳島駅前

西新町商店街

脇町の町並み

サテライトオフィス「森邸」

サテライトオフィス(内部)



高知駅

はりまや橋


帯屋町商店街

高知城

ひろめ市場

大堂海岸

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2018年9月9〜14日

地域再生視察① 香川編

日本の地方は少子高齢化、人口減少、過疎化、シャッター商店街化等々、絶え間ない荒波にもまれて疲弊している状況です。特に四国の4県は最前線と言えるでしょう。人口は少なく、農地も少なく、本州と四国を結ぶ本四架橋があるとは言え、交通の便も良いとは言えない。また地理的にも感覚的にも東京から遠く、超目玉の観光資源もないことから、首都圏からの観光客が限られており、唯一の成長産業と思えるインバウンドの恩恵も少ない。

そんな待ったなしの状態にある四国ですが、考え方によっては非常に魅力のあるエリアなんですね。スーパースターの観光地はなくても、海、山、歴史、町、とバランスよく観光資源が分散し、4県とも粒ぞろいで実力伯仲。自然は乱開発されておらず、四万十川を筆頭に高い純度を保っています。歴史分野では、古い街並みも豊富で、天守閣の保存率が全国一と呼べるほどの城王国。そしてなんと言っても「八十八ヶ所」という、四国全部を納める蒔絵重箱のような冠(かんむり)。つまり四国は宝島なのです。

意外というか当然というか、そんな四国は知られざる「地域活性化」や「ふるさと創世」の先進地域。そこで6月に香川県と徳島県。8月に高知県と二回に分けて現地視察に行きましたので、レポートします。まずは、香川編です。

■高松市の概要
香川県の県都高松市は四国の玄関口。愛媛県の松山市に次ぐ2番目の人口(41万人)を誇ります。本四架橋に近く、本州とのフェリーも頻発し、四国で最も交通の便が良い街です。駅前からアーケード商店街が縦横に伸びており、総延長は日本一の呼び声。
しかし1990年代以降、急速に郊外化が進んで中心市街地が寂れ、アーケード街もシャッター通り化が進行し、見る影もなくなっていました。

そこで、その中心的な丸亀町商店街が立ち上がって、賑わいを取り戻すために大胆な取り組みを行った結果、今では全国的にも有名なまちづくりの成功例と評価されています。このまちづくり、まちおこしを目指す人間にとっての聖地とも呼べる垂涎の場所、丸亀町商店街を視察しました。

■丸亀町の概要
まず驚くのが、垢抜けた都会的な建築。ヨーロッパのようなドーム型の天井に、アーチ型のブランドショップが立ち並び、100万都市のような風格があります。これを見るために商店街に来て、歩きたくなるでしょう。また、アーケードの中に広場的な心地良い広い空間があって無料でひと休みできるし、なんとなく滞在したい気分になります。
日本の商店街やアーケードの欠点は、お店ばかりでレストスペースがないこと。お店でも休めないので、滞在時間が短くなりせっかく回遊して来たお魚、いやお客を逃してしまうのです。

ショッピングモールに人が集まるのは、単にお店が多いからではなく、レストスペースが多くて滞在しやすいのも大きな理由。それに加えて、寂れた商店街にはない「高級感や都会の雰囲気」も味わえる。地味な日常とは異なり、主役にも観客にもなれる「ハレの場」なんですね。

■商店街再生、成功の要因
地域活性化というと、いい意味での古さ(レトロ感)や、郷土性を打ち出すパターンが多いのですが、丸亀町は逆にハレの場としての「モダンな都会の風景や空気」を持ち込んだことが成功に繋がったのでしょう。
また丸亀町の成功の要因の一つとして、商店街に住居スペースを作ったことが挙げられてます。つまりお客さんがわざわざ足を伸ばすのではなく、客自前というか、日常生活のテリトリーにあるわけですね。

■今後の課題
ただし、問題がないわけではありません。おそらく高松市の人口や経済力などから考慮して、丸亀町は多少背伸びしている部分があると思います。歩行者は多いのですが、ブランドショップや高級感のあるお店に入る人は少ない気がしました。
また連結している多くの商店街のうち、丸亀町だけが突出していて、他の通りは通行人も少ないし、どうしてもくすんで見えてしまう。この格差明暗を解消して、全体に賑やかさを増殖させることができるのか?あるいは分散させずに丸亀町に集中させて、より大きな賑わいをつくるのか?
日本中の商店街が、期待と不安の目で注視していることと思います。

鳴門大橋(徳島)

四万十川(高知)

丸亀城(香川)

高松駅前

丸亀町アーケード


アーケード内広場

他の商店街

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2019年7月4日

関東宗像三女神めぐり① 印西編

■神社リバイバルプロジェクト
現在、プロペラの新しい活動として、若い世代の神社・神道への興味を高め、神社の復興や地域活性化に繋げる「神社リバイバルプロジェクト」を立ち上げました。
その端緒として、有名な神社はもとより、アニメとのコラボなど新しい試みを行っている神社、小さくとも地域特性が強くて異彩を放っている神社など、気になる神社をリサーチして、プロジェクトの方向性を模索したいと思います!
第一弾は、千葉県印西市の宗像(むなかた)神社。

■宗像神社とは?
宗像神社の総本宮は、世界遺産になっている福岡県の宗像大社。祭神は宗像三女神と呼ばれる市杵島姫(いちきしまひめ)、田心姫(たごりひめ)、湍津姫(たぎつひめ)の三柱の女神で、アマテラスオオミカミとスサノオノミコトの間に生まれたとされています。この三女神を祀る宗像系列の神社数は、なんと全国で約6000。同じく世界遺産の厳島神社(広島県)や江の島神社(神奈川県)も抱える一大メジャー軍団なんですね。

ところが本家とも言える「宗像神社」名義は、意外なことに全国でたった70社ほど。しかもそのうちの13社が、ほぼ千葉県印西市という人口10万人の都市にかたまっているそう…。気になりませんか?そこで、早速リサーチすることにしました!

■印西市の概要
印西市は、柏と成田の中間に位置し、中心部を鉄道の北総線と国道464号線が重なるように横断。ロードサイドには千葉ニュータウンが広がり、巨大ショッピングモールやチェーンストアなどがこれでもかと立ち並ぶ「ザ・首都圏郊外」の趣です。しかし南部には推定年齢2万才の印旛沼があり、緑濃い田園地帯や森林が残り、神様が遊んでいても不思議ではない雰囲気。もちろん、宗像神社群はその南部にあるのです。
そして今回、2回に分けて印西市にある12の宗像神社を視察しました。

■12の宗像神社
12社の名称はすべて宗像神社なので、通称としての地区名で記すと、鎌苅、岩戸、吉高、吉田、戸神、山田、師戸、瀬戸、船尾、造谷、大廻、平賀。
どこも小規模ですが、森に囲まれた閑静なロケーションが素晴らしく、神様オーラぷんぷん。常駐の宮司さんや神職さんはいないようで、参拝客も見かけませんでしたが、境内はこぎれいに掃除してあり、地元で大事にされているのでしょう。

そんな中でも、戸神神社は特に素晴らしかった!畑と林が広がる美しい田園風景の中を歩いていると、ひっそりとした森が見えてきたので、近くまで行ってみたら、急に鳥居が現れ、奥には慎ましくも凛とした本殿が鎮座。その「いにしえ感」と「秘められた雰囲気」は格別で、しばらく陶然と立ち尽くしてしまったほどです。

それにしても、この宗像神社のある印旛沼周辺は不思議ですねぇ。高い山もなく、東京からも近く、人口も多いのに、濃厚な地方臭と里の香りがあり、驚くほど深みのある森があり、古代にワープしたかのようなミステリアスな空気に包まれています。関東でも有数のパワースポットと言えるのではないでしょうか?

■印西宗像神社の謎
とは言え、印西市にこれほど宗像神社がある理由は、実は分かっていません。ただ、印西市周辺には古代の大豪族・物部氏が氏神とする「鳥見(とりみ or とみ)神社」という神社も20以上集中していることから、鳥見神社との関係性が大きな鍵となりそう。
古代、宗像神社の宮司は宗像氏という豪族で、物部氏が大和から関東に移住する際に、その宗像氏も同行したのではないかと考えられるのです。また、宗像三女神は海の道の安全を守る神。千葉県内陸部の印旛沼の畔にある印西市は、元々水運交通の要地だったので、宗像神社が迎えられたのかもしれません。

■今後の可能性
印西市は「全国住みよさランキング」(東洋経済新報社)で2018年まで7年連続トップになるほど、住環境に恵まれた都市と評価されています。しかし、ショッピングセンターと大型ショップが連なる中心部は無機的で掴みどころがなく、元々繁華街だった北部はJR成田線の駅がシャッター通りと化し、南部はコンビニもあまり見かけない農業エリア。つまり、はっきりとした町の顔がないのです。
そんな印西市にとって宗像神社群は「謎の新パワースポット」として顔になりうるポテンシャルを秘めていると思いました。今後も引き続き、注目していきたいと思います!

印西市マップ(広域)

印西市マップ(市域)

印旛沼

戸神地区

宗像神社(戸神)

宗像神社(師戸)

宗像神社(瀬戸)

印西市の国道464号線


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