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2018年9月9〜14日

フィンランド視察

社会福祉が充実し、シンプルで実用的な北欧デザインで名をはせる北欧4ヶ国(他はスウェーデン、デンマーク、ノルウエー)。その中でもフィンランドは「世界幸福度ランキング」トップで、教育水準も世界最高クラス。人口小国なのに「ノキア」なんて世界的な企業もあります。
言語的には他の3国とは異なるアジア系で、親近感を感じるし、なんと言ってもあの「ムーミン」のふるさと。関連書籍やガイドブックの充実度から鑑みても、日本で最も人気の高い国です。

私は長年フィンランドに興味津々でした。オリジナルな匂いがぷんぷんするし、まちづくりの参考になりそうだし、もっと言えば、来るべき「ポスト大国」時代の日本の将来像が見えるような気がするから。そこで思い切って貯金を切り崩し(涙)、フィンランドの首都・ヘルシンキに行ってきました!簡単ですがレポートします。

■現代と過去の融合
ヘルシンキは石造りの建物が多く、街並みは欧風なのですが、他のヨーロッパの首都と比べると、あまり歴史的建造物は多くなく華やかさもありません。しかし、古い建物と現代的な建物がうまく調和して、重厚さと軽やかさが同居しています。新しいビルも周囲の石造りの建物から浮かないよう、バランスをとってるようですし。
東京でも丸ビルのように、昔(風) の建物とモダンなビルを合体させた建築物が増えてますが、ちょっとツギハギ感満載で、クセが強すぎるような気が(苦笑)。

■ロシアの影響
フィンランドが他の北欧諸国と異なるのは、ロシアの影響です。歴史的にロシアに支配された時期があり、共産主義のソ連時代も西側にありながらロシアとは密接な関係で、最大の貿易相手国だったのです。そのため、街の中心部にはロシア風の大聖堂があり、ロシア正教の大寺院もあります。またヘルシンキ特有っぽい「浮ついた感じのない」質実な感じの街並みにも、旧ソ連の香りがぷーんと。「ありそうで、意外とない」フィンランドの風景や空気感を醸成する素材の一つが、ロシアでは?

■屋根のないミュージアム
北欧デザインの特長は、生活空間を快適で居心地よくするために工夫されていることで、実用的な家具、インテリアなどが代表的。そのような美意識とデザインは街中でもいかんなく発揮されています。例えば空港、電車、トイレといった公共的な空間で、一つ一つの備品がシンプルで機能的で、さりげなく美しいんですね。
ドイツもシンプル&機能的ですが、どこか外見が無骨なのに比べて、フィンランドには軽やかさがあります。ヘルシンキは街じゅうが屋根のないミュージアムといえるぐらい、おしゃれで美しいものと簡単に出会うことができる至福の町です。

■夢のアカデミア書店
これほど美しく心地の良い書店は、世界にない。独断でそう決定しました。吹き抜けの天井の美しさと機能性。実は大胆など真ん中のレストスペースと、質素(なんせ裸!)なオブジェ。長ロ型で見晴らしの良い2階の回遊路。センス良い文具を揃えたコーナー。そして国民スィーツのシナモンロールが食べられる、癒しのカフェ。
何よりお客ファーストのゆったり見やすいディスプレイが素晴らしい。私はあまりにここが気に入って、3回も行きました。いま爆発的に書店が減少してる日本でも、こんな書店なら生き残り100%です。

■日本との類似性
フィンランドのデザインは「足し引きの美学」だと思います。私の知る限り、ヨーロッパは足し算の美。カトリックの大聖堂や、ヴェルサイユ宮殿などに代表される、「これでもか」と盛り付けられた絢爛豪華な美です。でもフィンランドは、何か足したら余分なものを引く。または、足すために前もって引くという感じなんです。つまり余分な贅肉をつけずに素材を生かし、フレッシュで風通しがいい。
枯山水や侘び茶など「引き算の美学」と称される日本との共通性を感じました。おそらく両国民とも豊かな自然の中で生まれ育ち、「素の美しさ」に価値を見出してるからでしょうね。

■総括
かようにフィンランドは、想像以上のデザイン&生活大国でした。
「どう?すごいでしょ!」という強い主張はないのに、気がついたらどこもかしこも「綺麗だらけ」という、普通の人を装った達人のような凄み。しかも社会福祉だけでなく、ITや、キャシュレスの分野でも先進国だし。
現代性、伝統、サウナやアウトドア活動、豊かな社会、質素で堅実な国民性。大国でも目立つ国でもありませんが、非常にバランスがとれていて、理不尽さのない国。

今後も、まちづくりのみならず「国づくり」のモデルケースとして、注目していきたいと思います!

ヘルシンキの街並み


ヘルシンキ大聖堂

地下鉄

公衆トイレ

アカデミア書店


野外マーケット

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2018年3月9〜10日

TOKYO画材ショー

東京池袋のサンシャインシティーで、洋画材料・日本画材料・額縁などのトップメーカーが一堂に集まった「TOKYO画材ショー」に、プロペラで普及・販売を行なっている「キャンバスチェアー」を出展しました。このショーは、「JAWA-SHOW」(主催:全日本画材協議会)という、全国の画材販売店および額縁・文具・ホビー・コミック・インテリア・ファッション雑貨・ホームセンター・教育教材・通信販売業者が集まる見本市との併催。つまり自動的に両方に参加することになるわけです。

■オープンまでの不安
私たちはキャンバスチェアを画材として販売・普及させるために色々と調べた結果、JAWA-SHOWのことを知って、出展の申し込みをしました。しかしキャンバスチェアが、従来の画用紙や布のキャンバスとは全く違う「異形の画材」だったため、審査が通るのに時間がかかってしまいました。まぁ、確かに違和感がありすぎです(笑)。

実際に、他社の展示ブースを見ると、オーソドックスな絵の具・筆・画用紙・文房具・額縁などのメーカーさんが整然と展示されていて、私たちのブースだけが思いっきり浮いています。うーん、この感じは快感でもありますが、目立つだけじゃ不十分。画材として興味を持ってもらわないと…。これまで何度も展示会や見本市には出展しましたが、今までにはない不安を覚えながら、オープンを迎えました。

■お客様のリアクション
意外でした。天気は悪いし、かなり専門的な展示会なので、来場者は少ないと思っていたのですが、オープン当初からたくさんの人々が詰めかけ、商談の花が咲いています。嬉しいことにキャンバスチェアにも多くの人々が立ち寄り、質問攻撃。これは、いけるかも…。今までの経験から、展示会初日のオープン時は先物買いのもっとも熱心なバイヤーさんが多いので、注目を集めたのでしょう。

商品の性質上か、お客様のリアクションは、「これは面白い!新しい!」と理屈抜きでパックリ食いつかれる方、興味は示すけど冷静に品定めをされる方、一瞥してまったく無視という方に分かれます。元々、キャンバスチェアはベストセラーになるような商品ではないと思うので、理屈抜きで気に入ってくださる方にアプローチしていくべきだと再認識しました。

■JAWA-SHOWの目的
今回出展してみてわかったのですが、このJAWA-SHOWに来場されるお客様は、かなりの部分具体的な商談が目的。事前に訪問するメーカーもほぼ決まっているので、私たちのような素人のメーカーが新奇な商品を携えて売り込むのは楽ではない、ということです。新しい商品、クリエイターのお目見えも多い「ギフトショー」などとは、性格が異なるんですね。

ただし今年から始まったTOKYO画材ショーは、一般の方も来場可能。そのせいもあって、実際に絵を描くクリエイターの方々から「面白い!描いてみたい!」と喜んでいただいたのは自信になりました。

■収穫と問題点
2日間の会期中、多くのご来客があり、名刺交換をさせていただきました。今回の出展の目的としては、キャンバスチェアの存在を知らせることと、業界の方々からのリアクションを得ることがメイン。その意味では十分収穫がありましたが、成約にまでいたらなかったのは残念!もっとキャンバスチェアの楽しさや効果を伝える方法を模索し、契約の際の条件や料金設定なども細かく決めておく必要性を感じました。

そんな反省もありつつ、トータルでは画材、教材の業界の方々からたくさんの具体的なアドバイスをいただいたことは、大きな成果でした。改めて、キャンバスチェアが世の中に広がるよう、頑張ります!

最後に今回わかったポイントをいくつか挙げてみます。
■とにかく理屈抜きで興味を持たれる方々を見つけ、ターゲットにする
■TやLなど、文具、画材、アイディア商品などを扱う量販店からの需要はある
■学校教材として販売するには、具体的な作業内容、学習効果などを明記する
■予算が決まっている公立校より私立校の方が、採用される可能性が高い


TOKYO画材ショー

キャンバスチェアのブース



展示会の来場者



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2018年1月13〜20日

世田谷まちづくりセミナー

東京都世田谷区のまちづくりを支援している「一般財団法人 世田谷区まちづくりトラスト」と「政策研究大学院大学」が共同で開催した「世田谷まちづくりセミナー」に参加してきました。内容は、増え続ける空き家対策として、世田谷の代沢地区にある実際の住宅をモデルにして、まちづくりに活かすためのプランを立てるというもの。プロペラの地元中の地元でまちづくりを学べるのだから、行かない理由はありません。富士宮の観光まちおこしとは異なるアプローチを体験できるはずです。

セミナー1日目〜現場視察〜
初日の朝、井の頭線「駒場東大前駅」に集合。上は60代から下は学生さん風まで、老若男女40人ほどの参加メンバーが連れ立って、現場の空き家モデルはもちろん、周辺にある学校や集会所、商店街などまちづくりのキーになるような所を観察&散策。
問題の空き家は、代沢1丁目の住宅地のど真ん中にある2階建ての一軒家。1階は3間にダイニングキッチンで、2階は3間のうち2間をアパートとして貸しています。その家で大家さんの住居を確保しつつ、まちづくりの核となる施設にするプランを立てるわけです。私の第一印象は、恥ずかしながら「カフェ以外、何ができるの…」

勝手知ったる代沢ですが、改めて気づいたことは、路地が多い、意外に起伏がある、店が少ない、高級一軒家と低層マンションが多い、そして外を歩いている人が少ないということです。おそらく、ファミリーにしても個人にしても富裕層が多いので、あまり近所づきあいもなく、地元意識も薄いのでしょう。
私の実家は代沢2丁目にあるのですが、80歳になる父親が最近足が弱くなって、ほとんど引きこもりと化しています。なんとか外に引きずり出して歩かせたいのですが、友人もいないし、行く場所もないので、中々出ようとしません。おそらく代沢の高齢者は同じ問題を抱えているのではないか?急に、他人事ではなくなってきました。

〜講演とディスカッション〜
午後、三軒茶屋のキャロットタワーに再集合。まずは専門家の方々のまちづくりに関する講義です。建築、エリアマネージメント、まちづくり会社など、様々な分野の専門的な立場からの話は、それだけで十分面白いしためになるのですが、今回は実際のプランをたてなければならないので、呑気に構えているわけにはいきません。
私は3班に組み込まれていて、リーダーは建築家の佐々木龍郎先生。年齢が近く、快活なお人柄で勝手に親しみを覚えました。他のメンバーは、40代ぐらいの女性3人と、30代、50 代の男性。職業はいろいろですが、みな空き家問題や、まちづくりに関わったり、興味を持っている方ばかり。ほとんど素人の私は戦力になるだろうかと少々不安になりますが、地元というのは強みになるでしょう。

さて、いよいよ各班のディスカッションです。まずは空き家を使って何をやるか、制限時間内に各自のアイディアを提案。他の人たちはバンバンメモに書き出してるのに、私はしばらく何も浮かばず焦りましたが、なんとか「10代のまちづくり会社」と「こたつカフェ」と2つ絞り出しました。みんなそれぞれ個性的なアイディアですが、やはり基本はコミュニティスペースとカフェが主。ありきたりでも、現実的に考えると王道になってしまうのかもしれません。
しかし佐々木先生が私たちメンバーのざっくりした思いつきや、単発のアイディアに方向性と具体性を与えてくれて、だんだんとまとまってきました。

〜中間プレゼン〜
1日目の最後は各班の中間発表。現時点でのプランを専門家の方々にプレゼンして、評価していただきます。その内容は、プランの背景や分析から始まって、テーマ、具体的にやること、空き家の改修設計図、予算や収支予定など多岐にわたる本格的なもの。今日の時点ではまだ途中段階で構いませんが、最終的には全部の項目を完璧にしなくてはなりません。
今日初めて現場を見て、初顔合わせで、たった1時間半で「どうやれっちゅうの?」と、少々泣きが入りながらも、なんとかキリキリで間に合いました。
プレゼンは得意分野別に3人で分担。まだまだ粗はあるものの、おおむね良い評価をいただいたので、その案を発展させることになりました。しかし来週はもう最終プレゼンです。めちゃめちゃハードやわぁ(苦笑)。


セミナー2日目〜ディスカッション〜
先週と同じく三軒茶屋のキャロットタワーに9時半集合。まずは専門家の方の講義を受けてから、班ごとのプレゼン準備です。先週のセミナーの後、班のメンバーが各々プレゼン資料を作成し、メールで交換してはいたのですが、当然方向性や資料の作り方も異なり、お互い目を通すにとどまっていました。これを、昼食込みでたった4時間半でまとめるのか・・・正直、胃が痛い!

はじめは、内容について自由にディスカッションしましたが、それぞれ興味やこだわりが異なるので百家争鳴、なかなか意見がまとまりません。そこで、佐々木先生が華道のように余分な枝や葉を削ぎ落として、大事な幹の部分と、おさえるべきポイントを的確に指示。あとはプレゼン資料を項目ごとに分担して作り込んでいきます。
とにかく時間との戦いで、冷や汗をかきながら、佐々木先生にダメ出しを受けながら、ギリギリで(正確には若干オーバーして、他の班の発表中に)完成。

〜最終プレゼン〜
プレゼンは、項目ごとに資料作りを担当した本人が行うことになり、なんと5人のバトンリレーになりました。私は責任重大なトップ。さぁ、殺せ!
私たち3班のプランのテーマは「散歩」と「部活」。住宅地を住宅地のまま生かして、路地や起伏のある道を散歩しながら健康になることが柱。さらに同じような趣味や目的を持つ人々が好きな時に集まって交流したり、活動したりする「部活」というコミュニティを各所に作って、回遊するようなしくみを考えました。空き家は、そのクラブハウス、もしくは一部室という位置付けです。

他の班がかなり時間オーバーする中、私たちはリレーもうまくいって、ほぼ持ち時間通りにプレゼン終了。その後の専門家の方による質疑応答でも各人が対応し、チームワークの良さが際立った感じでした。これは佐々木先生の的確な指示と、雰囲気作りによるものが大きかった思います。

そして審査員の投票の結果、私たち3班が優勝しました!細かい部分ではまだまだ練り上げる必要があると思いますが、代沢ならではの特徴を生かした「散歩と部活」というキーワードが審査員の方々に刺さったようです。
実はこの散歩というキーワードは、私が自分の父親のことを考えた時に浮かんだもので、私にとっては切実なことでした。やはり机上ではない現実に即したアイディアには説得力があるのでしょう。

〜総括と今後〜
今回学んだことは、「まちづくりは総合力」ということです。一人では何もできないし、様々な得意分野、専門分野をもつ人たちのチームワークが不可欠です。しかしスポーツと違ってスター選手はいりません。主役はあくまでも住民の方々なのです。

私はどうしてもプロジェクト全体のテーマだとかコンセプトなど、概念的なことを考えがちなのですが、実際には建物の具体的なリノベーション方法や、継続させるための収支計画など、地に足をつけた実務的な部分が重要になります。私たちの班には、銀行の方や実際にコミュニティスペースを運営している方もいて、そのあたりのリアリティも重視したので、より完成度の高いものになったと思います。

嬉しいことに、世田谷まちづくりトラストさんの意向で、私たちのプロジェクト案を採用したいというお言葉をいただきました。どのような形で関わるかは未知数ですが、地元のまちづくりに貢献できるならプロペラの代表冥利に尽きます。

佐々木先生をはじめメンバーの方々とのいい出会いもあったし、本当に貴重な経験となりました。ひとくちにまちづくりと言っても、実際に自分たちに何ができるのか、どんなことをやるべきなのか、これから模索していきたいと思います。

まちづくりトラスト

代沢地区

空き家モデル


住宅街

池ノ上駅

プレゼン用メモ

世田谷区の施策



3班のプレゼン資料抜粋





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2018年1月12日

富士宮まちづくり研修

庶民的で安価な、いわゆる「B級グルメ」でまちおこしに成功した代表例が、静岡県富士宮市。「富士宮やきそば」は、B1グランプリを2年連続で受賞し、この焼きそば目当てに多くの観光客が訪れています。
プロペラの今後のまちづくり事業のヒントを得るべく、その富士宮市で開催された「まちづくりの実地研修」に参加してきました。主催は経済産業省が、中心市街地活性化のために運営している「街元気プロジェクト」。

■富士宮市の市街地
当日は快晴。第一印象はどこからでも雄大無比な富士山が望める、ゆったりした街。市内には、富士山本体、白糸の滝、朝霧高原、富士浅間神社など、なんと6ヶ所もの世界遺産を抱えているんです。しかし2キロ以上もある商店街の大部分と、アーケード商店街は、人通りもほとんどなく、シャッター通りと化していました。

富士宮で特徴的なのは、駅前に巨大なイオンモールがあること。通常は、郊外にモールがあるせいで駅前の中心市街地がさびれるという図式なのですが。このイオンは平日のお昼でも買い物客で賑わっているので、ここが駅前商店街の役割を果たしているわけですね。それはそれで、これからの街のかたちとして増えていきそうな気もしますが、中心市街地に商店街が無くなってしまうのは…悩ましいところでしょうね。

■富士宮焼きそば
今回の研修の講師は「富士宮焼きそば学会」の会長・渡邊英彦さん。渡邊さんは焼きそばによるまちおこしの仕掛け人で、B-1グランプリを主催している「愛Bリーグ」の会長でもある、まちづくりの世界では知らない人のない有名人です。

講演に入る前に、研修に参加した10名ほどのメンバーと共に、渡邊さんの案内で富士宮市内をざっくり回遊。富士宮駅から駅前の広い参道のような道を歩き、そこから商店街〜今年完成したばかりの「世界遺産センター」〜富士宮のシンボル「富士山本宮浅間大社」〜焼きそばのお店が小広場にひしめく「お宮横丁」へ。
世界遺産センターは、世界的建築家の坂茂さん設計の、鳥居と逆さ富士をモチーフにした美しい建物。またお宮横丁では、初めて地元の富士宮やきそばを食べましたが、モチモチして確かに外で食べるより美味でした。

■研修内容
渡邊さんの講演は、主に「メディアを使ったまちおこしの戦略」「商標登録の活用のしかた」「B-1グランプリの紹介」。途中、富士宮市役所の方からの、実績や今後の取り組みなどの話を挟んで2時間以上に及びましたが、その話力に舌を巻きました。
長年現場の最前線で格闘されてきただけに、単刀直入でジョークやぶっちゃけトークも交えつつ聴く人を飽きさせません。

渡邊さんのお話で印象的な内容を以下に抜書します
■まちおこしのネタは何でもいい。発信力が大事。
■マスコミに注目されることをする
■あたり前のものを、特別なものとしてみせる
■「面白い」「楽しい」「怪しい」が効果的
■ネーミングはダジャレ&親父ギャグ。 そこに理屈をつける
■商品を商標登録して、ロイヤリティによる独自の収益源をつくる

富士宮のまちおこしは「焼きそばによる観光客誘致」がテーマであり、例えば住民を対象とした商店街活性化とは異なりますし、渡邊さんというカリスマ的リーダーによる成功体験なので、他の場所で他の人が応用できるかどうかは未知数です。

私にとっては、商標のロイヤリティで自前で活動資金を得ようという話がためになりました。プロペラは運営資金を捻出することに頭を悩ませているもので(苦笑)。
あと、まちづくり活動の現場で、当事者のお話を聞けたことは刺激になりました。
プロペラでは、どのようなアプローチでまちづくりにコミットしていくのか、これからの課題です。

■懇親会
研修会終了後は、商店街にある豚肉専門の開放的なバールで懇親会。参加者は愛知や岐阜などの中京圏の方が多く、静岡県が東京圏と名古屋圏の中間にあることを実感。
お酒も入ったせいか、渡邊さんも舌が滑らかになり、ザックバラン&裏話トーク。もちろん、ここでは書けませんが(笑)
結局、帰りの電車ギリギリになり、駅まで走って帰りました。富士宮は遠かった!


まちげんきサイト

富士宮駅前

イオンモール

駅前商店街

世界遺産センター

お宮横丁


参加メンバー

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2017年5月21日

ノアの実戦使用テスト

不慮の水難事故から命を守る“ヒューマンプロテクトウエア「ノア」”は街着もあわせて、様々なアウトドアレジャーでの使用を目指していますが、その中でもやはり愛好者の人口が多い釣り(フィッシング)は大きなテーマの一つ。そこで、今後の開発テストも兼ねて本格的な釣りの機会に着用してみました。

■場所と条件

【釣り場】神奈川県湯河原町の福浦漁港
【釣りの種類】磯釣り、ウキフカセ釣り
【ウエア】夏用メッシュ、スリーシーズン用メッシュ

朝の7時半ごろ東海道線の真鶴駅に着。同行者は私(岩男英樹)の釣りの師匠でもある友人のS君。彼は普通のウエアです。5月にしては季節外れの陽気で、気温は30度を超える模様。半袖一枚で十分ですが、テストなので夏用メッシュを着て釣り場へ。
福浦港は比較的こじんまりとした漁港ですが、堤防、テトラポット、岩場とバリエーションがあって釣り客も多いようです。すでにめぼしい場所は先客に取られており、テトラポットに陣取ることにしました。テトラポットは足場が狭く、足を踏み外したら命の危険があるので特に注意が必要です。

■夏用メッシュ
夏用メッシュは中の浮力材もメッシュ状になっているので非常に通気性がよく、また高い襟元が日光を防ぐ役割をして、かなり暑さに有効であることがわかりました。材質が軽く、体を動かしやすいので、キャスティングする時もスムーズです。

問題点は、まず半袖なので腕にもろに日光を浴びること。おかげで両腕が日焼けで水ぶくれになってしまい、ますます汚い中年に(涙)。もう一点は、やはり収納が少ないことです。磯釣りは特に細かい道具を使うので、ある程度は身に付けておく方が便利だと思いました。

■スリーシーズン用メッシュ
スリーシーズン用は、夏用と異なって浮力材が通常のソリッドタイプで、かつフードも付いているので浮力が強いのが特長。その分、暑さへの耐性が懸念材料です。
しかし、夏用メッシュでの日焼けに懲りたので、インナー的に長袖のラッシュガードを着て着用。また道具収納用に、S君にウエストポーチを借りて使ってみました。

さて、実際に着てみるとさすがに夏用と比べると通気性は劣ります。フードも日差しを遮る効果と共に、保温の逆効果もあり、夏用よりも発汗は多くなりました。とは言えラッシュガードを下に着ている割には暑さは思ったほどではないし、またフォルムが体にフィットする作りになってるので、動きやすさも抜群。真夏と真冬以外は、十分使えそうな手応えを感じました。

■最後に
肝心の釣果は、手の平小サイズのメジナ、アジが中心で、数は20匹ほど。テストではありますが、久々の本格的な磯釣りを堪能しました。子供達にもアウトドアの魅力と釣りの楽しさをぜひ知ってもらいたいなぁ。改めて、ノアの開発と普及への意欲が高まりました。


福浦港


夏用メッシュ

スリーシーズン用メッシュ


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2017年1月31〜2月2日

熊本地震の被災地視察行

昨年4月に起きた熊本地震から約7ヶ月。九州熊本は私(岩男英樹)の出身である長崎県に隣接し、親近感もある所なので非常に気になっていたのですが、なかなか足を運ぶことができませんでした。しかしプロペラ設立を機に現状の視察と、私たちの「キッズ・クリエイティブ・プロジェクト(KCP)」に協力していただける個人・団体を探すために、熊本に行ってきました。

■熊本市と熊本城
まず初日は飛行機で福岡に入ってレンタカーを借りて、先に送っておいたCom.チェアをピックアップ。熊本には夜に到着して、2日目の朝から熊本市街の視察をスタート。
ショックでした。あの勇壮な熊本のシンボル熊本城の石垣が無残に崩れて、城郭は工事の鉄筋に囲まれて近づくことができません。それでも、城を取り囲む公園には入ることができるので、遠巻きに城を眺めながらグルっと一回り。あの巨大な石垣を積み上げるのに、あの無数の瓦屋根をふき直すのに、どれだけの時間と労力がかかるのだろう?

ただ、意外だったのは外国人観光客です。地震で熊本城が壊れていることは周知のはずなのに、それでも多くの外国人が来ていました。それだけ熊本と熊本城が魅力のある観光地で、人々が関心を持っているのでしょう。KCPの活動を通して、外国の方々との交流を生み出すことができるのではないか?何か一条の光が射したようでした。

■最大の被災地、益城町
熊本地震で最も大きな被害を受けたのは、熊本市の東部にある益城町。テレビの被害報道もその多くが益城町の惨状でした。でもさすがに7ヶ月も経てば、ガレキもほとんど撤去されているだろうと楽観していました。
実際に行ってみると、大きな通りではほぼ撤去されて更地が点在している状況です。しかし少し奥に入るとまだまだ崩れたままの住居や建造物が残っており、呆然となってしまうような光景がそこここに広がっています。東日本大震災の被災地との違いは、向こうは津波になぎ倒されたものでしたが、熊本は地震だけでこれだけ破壊されてしまったのです。どれだけすごい揺れだったのか・・・。
また印象的だったのは、全くビクともしてない建物と、完全崩壊の建物がすぐ近くに混在していること。おそらく建物自体の耐震構造と、立地している地溝の問題です。

そんな益城町もようやく撤去が急速に進み出したそうなので、この悲劇的な光景も長くは続かないでしょう。急造のプレハブ作りの復興商店街に行ってみると、中では多くの人が食事をし、お店の人たちの元気な姿が印象的でした。九州人の明るさとバイタリティで、きっとこの苦境も乗り越えられることでしょう!

■阿蘇周辺の惨状
益城町を視察した後は、阿蘇の方へ向かいました。まだ道路が復旧していない箇所も多く、回り込むようにして南阿蘇村へ走っていくと、見慣れた雄大な高原田園地帯が広がっています。しかし、点在する建物や家々は壊れているところが多く、とにかく人の姿を見かけません。特に今回の地震で休校になった東海大学周辺は、多くの学生用アパート、マンションが崩壊し、ゴーストタウンのようになっています。

さらに衝撃だったのは、阿蘇の山体が崖崩れで大きくえぐられ、あの阿蘇大橋が完全になくなっていたこと。我が九州のシンボルの大きく傷ついた姿に胸が痛みます。ましてや熊本の方々は耐え難い思いだったと思います。すごく重いものを背負った気持ちで、阿蘇を後にしました。

■地元の活動状況
各地を視察しながら、主に熊本市内と益城町の役場や社会福祉協議会、NPO団体などに接触してみました。正直に言うと、今の段階では協力いていただくのは難しい状況だと思いました。その理由を箇条書きします。

■まだまだ撤去や復興活動も遅れており、組織的な支援体制などもできていない
■役所関係は、支援活動とはいえ民間団体が収益を得る活動に協力するのは難しい
■東北と比べると規模が小さく、被災した子供の数が少ない。子供の絵の教室や、
 子供のケアをするNPO団体などがほとんどない
■特定の団体を支援するより、もっと大きな「熊本城の修復」といったテーマを
 掲げる方がいい

収穫だったのは、熊本市内で障がい者アート支援をしているNPOと、子供の絵の塾を開いている主催者から、熊本で活動する際はできるだけ協力したい、とのお言葉をいただいたことです。熊本県民は特に愛郷心が強く、復興に向けて不屈の思いを持たれている方が多くいらっしゃいました。九州、頑張れ!

今回の熊本視察の結果をもとに、私たちは何をすべきか、何ができるのか。熟考したいと思います。


修復中の熊本城


益城町の状況



益城町の復興商店街


南阿蘇村

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2017年1月19〜21日

ジャパンフィッシングショー2017

横浜パシフィコで開催された「ジャパンフィッシングショー2017」に、ダダグラムが開発し、プロペラが販売と普及活動を行うヒューマンプロテクトウエア「ノア NOAH」を出展しました。
3日間、プロペラスタッフである英樹、岩男、鈴木の50代トリオ総動員でお客様対応。さすがに老体にはこたえましたが、予想以上に大きな収穫を得ることができたので、大変満足しています。

デザイナー岩男によるディスプレイの効果もあって、多くの人が足を止め、パンフを手に取ったり、試着をして率直な感想を述べていただきました。また、海外、国内のメジャーなメーカーの方々が興味を示されたことは、今後の大きな自信になります。

■社会的な意義
ノアの使命でもある「命を守る」という点でも興味深い意見をいただきました。
埼玉県のある都市には溜め池が多く、子供にとって危険なので、近づかないような指導がされているそうなのです。しかし昔から川や池は子供の遊び場でもあり、気軽に自然と接することのできるフィールドです。

そこで、ノアのようなウエアを子供や高齢者に配布することで、安心して水場でも遊べるようにしてほしい、ということでした。これはまさに社会的な意義が大きいことなので、ぜひ実現させていきたいと思います。

■今後の課題
また多くの課題も生まれました。一口に救命ウエアと言っても、磯釣り、船釣り、ルアー、ヘラブナ、鮎など釣りの種類によって求められるものも異なります。
例えば磯釣りは多くの道具を身につける必要があるので、ポケットが多くないと実用的ではないし、船釣りになると、ほとんどの道具を足元におけるので、逆に余計なポケットは無用となります。

また、ノアが正式な救命胴衣並みの浮力があることはテストで実証済みですが、船やプレジャーボートに乗る場合は、国交省の試験に合格した認定の救命胴衣が義務付けられており、お墨付きという意味でも、認定は必須かもしれません。ただしその場合は、着心地や、ファッション性を維持できるかどうかが問題になるでしょうね。
そんな問題提起も含めて、大変有意義な経験になりました。

たくさんのご意見をいただいた方々に、この場をお借りして御礼申し上げます!






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